通勤定期を買わない社員がいると、交通費の不正利用や業務管理の混乱につながります。早めに事実確認と運用ルールの整備を進め、会社としての対応方針を明確にしておきましょう。
会社の交通費で定期を買わない社員にすぐ取るべき対応
事実を速やかに確認する
まずは冷静に状況を整理してください。誰が、いつから定期を購入していないのか、申請と支給の履歴を確認します。経理や総務のデータと勤怠記録を突き合わせると、出勤実態とのズレが把握しやすくなります。
記録に不備があれば、まずはその原因を探ります。システムエラーや申請忘れの可能性もあり、単純な手続きミスなら速やかに是正できます。事実確認は感情を排して行い、証拠となる資料を保存してください。
必要なら上司やチームリーダーにも確認を取り、業務上の理由や勤務形態の変化が背景にないかを確認します。早めの確認が後の対応をスムーズにします。
定期券や領収書の提示を求める
定期代支給の根拠として、定期券や領収書の提示を求めます。社内規程で提出方法や期限を明文化しておくと運用が安定します。電子データの提出を認めると保管や検索が楽になります。
提示が難しい場合は、購入履歴やカードの履歴など代替証拠も受け付ける旨を定めると現場の混乱を避けられます。提出を求める際は、理由と提出期限を明確に伝えてください。
提示がない場合の対応も事前に決めておきます。支給停止、遡及請求、面談の実施などを段階的に定めると公平性が保たれます。
出勤頻度と経路を把握する
定期券が必要かどうかは、出社頻度や通勤経路によって変わります。勤怠データやリモートワークの申請履歴、オフィスへの入退室データを使い、実際の通勤状況を確認してください。
通勤ルートが複数あり得る場合は、最短経路と実際の乗車経路を比べて、支給額が適正かどうかを検討します。出社日数が少ない場合は定期より都度払いが合理的なこともあります。
これらの情報は運用ルールの見直しや個別対応の判断材料になります。記録に基づく説明があると、社員とのやり取りも穏やかに進められます。
個別面談で理由を聞く
データ確認の後は、本人との面談で事情を聞きます。対話は非難する調子を避け、状況確認と今後の対応を共有する場としてください。事情により柔軟な対応が必要か判断します。
例えば出社日数の変化や私的な事情があれば、定期支給の見直しや支給方法の変更を検討します。意図的な不正が疑われる場合は、証拠を示しながら冷静に説明を求めます。
面談記録は後の手続きで重要になります。日時、参加者、話した内容、合意事項を文書化して保存してください。
定期を買わない主な理由とよくあるパターン
テレワークで出社日が少ないケース
テレワークが増えたことで、出社日が月数回にとどまる場合があります。この場合、定期を購入すると割高になるため、社員が都度支払いを選ぶことがあります。
会社側は出社日数に応じた支給方針を示すと混乱を避けられます。たとえば一定以上の出社日数で定期を認める、少ない場合は実費精算にするなどのルールが有効です。
申請手続きや支給方法が不明確だと社員が自己判断で対応してしまいます。明確な基準や手続き方法を示し、必要であれば柔軟な運用を導入してください。
自家用車や自転車で通勤しているケース
車や自転車で通勤している社員は定期券を買いません。通勤手段によって支給対象や支給額が変わるため、通勤方法の申告を義務付けることが重要です。
自家用車通勤の場合は駐車料金や燃料費の取り扱いを明確にし、通勤距離に基づく支給基準を定めます。自転車通勤は基本的に交通費支給対象外とする会社もあります。
通勤手段の変更が適宜申告されるよう、社内ルールや申請フローを整えてください。
定期代が割に合わないと判断したケース
定期券が割高に感じられるケースでは、社員があえて定期を買わない選択をすることがあります。頻繁に外出がある部署や勤務時間が不規則な場合に起こりやすいです。
この状況では、出社頻度を基にした支給方式や、日ごとの実費精算を導入すると公平です。社員の行動を無理に制限するより、選べる仕組みを整えたほうが満足度は高まります。
ルール変更時はシミュレーション例を示し、社員が納得できる形で運用を開始してください。
交通費を不正に節約する意図があるケース
定期を買わないことで不正受給を図るケースもゼロではありません。通勤実態と支給履歴が合わない場合は注意が必要です。
不正が疑われる場合は、まず事実確認と面談を行い、証拠を集めてください。故意と判断された場合は社内規程に沿った処分や返還請求を検討します。
ただし誤解や手続きミスの可能性もあるため、慎重に対応し、記録を残してください。
会社が整備できる制度と運用ルール
定期券提示を規則で定める
定期券や領収書の提出を就業規則や旅費規程に明記します。提出方法、期限、電子データの扱いなどを具体的に定めると運用しやすくなります。
違反時の措置も明文化しておくと社員にとって分かりやすく、公平性も保てます。例外的な扱いがある場合は、その要件も明示してください。
ルールを周知する際はQ&A形式の案内やワークフロー図を用いると理解が進みます。
出社日数に応じた支給方式を作る
出社日数に応じた支給基準を設定すると、テレワーク併用時の混乱を防げます。たとえば月に一定日以上出社する社員には定期を支給し、少ない場合は実費精算にするなどです。
基準は簡潔にして運用負担を減らしてください。目安となる日数や証拠書類の種類を明確にすれば、判断のばらつきが少なくなります。
導入前に試算を行い、社員説明会で不明点を解消しておくとスムーズです。
実費精算の運用フローを整える
都度払いを認める場合、明確な申請フローを用意します。申請書類の形式、提出期限、承認プロセス、精算頻度を決めることで遅延や誤払いを防げます。
電子申請システムを導入すると領収書の管理や検索が容易になり、監査対応もしやすくなります。承認者の責任範囲も明確にしてください。
定期購入と実費精算のどちらが有利か分かるよう、簡単な計算ツールを用意するのも有効です。
申請と証拠の保存ルールを決める
交通費の証拠書類は保存期間を定めて管理します。電子データの形式やアクセス権限、バックアップ方針も決めておくと情報漏洩を防げます。
監査や紛争時に備えて、提出物のタイムスタンプや承認履歴を残す運用にすると安心です。ルールは関係部署と協議して現場で運用できる形にしてください。
保存ルールを社内ポータルで確認できるようにして、従業員が迷わないよう整備してください。
不正受給となる場面と法的な対応
不正受給が刑事に発展する可能性
交通費の不正受給は悪質な場合、詐欺罪などの刑事事件に発展することがあります。故意に虚偽の申請を繰り返し利益を得た場合、刑事責任が問われる可能性が出てきます。
ただし刑事手続きに進むかどうかは、金額や故意性、反省の有無など総合的に判断されます。会社としてはまず内部で事実確認と記録の保存を行い、必要なら外部専門家に相談してください。
訴追リスクを避けるためにも、社内規程に基づいた迅速で公平な対応が重要です。
懲戒処分に至る例と注意点
就業規則に違反した場合、懲戒処分があり得ます。過去の判例では、給付金や交通費の不正取得が懲戒解雇や減給の対象となったケースがあります。
しかし処分を行う際は、手続きの適正性と証拠の十分性が求められます。本人聴取の機会を設け、公正な調査を行った記録を残してください。
軽微なミスと故意の不正は区別して扱うべきです。処分基準は就業規則で具体的に示しておくと導入後のトラブルが減ります。
返還請求や損害賠償への対応
不正による支給が判明した場合、会社は過払い分の返還を求めることができます。まずは書面で事実と返還を求める旨を通知し、合意が得られない場合は法的手続きを検討します。
損害賠償請求に進む際は、被害額の算定や立証が重要です。必要な記録や証拠を整え、法的手続きに備えてください。
円滑に解決するために、返還交渉の段階で弁護士へ相談することを推奨します。
早めに弁護士に相談するメリット
疑わしいケースが出たら早めに弁護士に相談することで、適切な対応方針が得られます。法的リスクの評価、証拠収集の方法、社内手続きの整え方について助言を受けられます。
また外部の専門家が入ることで、客観的で公正な調査が行いやすくなり、後の訴訟リスクを低減できます。コストはかかりますが、重大事案の早期解決に役立ちます。
会社が今すぐできる三つの対応
- 事実確認と記録の保存:勤怠・申請履歴を突合して不整合を洗い出し、関連書類を保存します。
- 規程の明文化と周知:定期券提出、出社日数基準、実費精算フローを就業規則や旅費規程に明記して周知します。
- 個別対応の実施:関係者と面談を行い事情を確認した上で、必要なら支給停止や返還請求など段階的な対応を進めます。
これらを同時に進めることで、不正リスクを下げつつ社員の不満を抑え、公平で運用しやすい仕組みを作れます。

