「まつやま働き方改革認定企業」紹介 「やりがいブラック」企業から、支援者自身も輝ける会社へ

                       

2003年設立。松山市内にて、知的障がいを持つ方の生活介護事業、就労継続支援事業(飲食店)のほか、障がい児のための放課後デイサービスを展開。

(NPO法人家族支援フォーラム/代表理事 米田順哉 様)

堀田:創業時から使命とミッションを大切にしているとお聴きしています。
   改めて、使命とミッションについて教えていただけませんか?
米田:「障害者の彩り豊かな地域生活が永続する社会仕組みづくり」
   これが、家族支援フォーラムの使命・ミッションです。そして、
   「障害のあるご本人、その家族、支援者の豊かな暮らしを実現します」
   が理念です。平成15年に創業した当初、
   お金も人もお客様もいないなかで始めたのですが、
   誰かが障害者のための社会の仕組みづくりをしなければならない
   そんな使命を強く持って創業しました!
   その頃からの核となっているものは、
   今も変わらずにしっかりと持っています。
   ただ、この理念ですが、
   実は創業時はちょっと違っていたんです。
堀田:それはどんな理念だったのですか?
米田:「障害のあるご本人と家族の物心両面の豊かな暮らしと幸せ」が
   当初の理念だったんです。
   創業してからこの言葉に違和感を覚え始めました。
   それは障害のあるご本人とそのご家族を支援している、
   私たち自身が、輝いていなくてボロボロになって支援しているのでは、
   豊かな暮らしと幸せなど提供することができないのではないかと、
   そう思うようになりました。
   皆さんも想像がつくのではないかと思うのですが、
   介護の現場はとてもハードワークの連続です。
   自己を犠牲にして誰かのためにという
   強い気持ちを持った人の集まりですから、
   <やりがいブラック>そんな言葉がふさわしいかもしれませんね。
   結局、そのハードワークが積み重なっていくと、
   現場のみんながボロボロになってきて。
   本人たちはやりがいで頑張っているのですが、
   少しずつ心と体がついていくことができなくなってきました。
   残念ながら、退職してしまうスタッフも出てきました。
   疲弊していくスタッフを見ているうちに、
   このままだとだめだと感じるようになりました。
堀田:疲弊していくスタッフを見ていると
   経営者として辛くなりますよね。
   しかも、やりがいをもって働いているのではなおさら辛いですよね。
米田:そうなんです。そこで、創業時の理念はやめて、
   私たち自身の「支援者自身も豊かな暮らしを実現します」
   という内容を、使命・ミッションに加えていきました。

   その頃から、スタッフ皆がより豊かな暮らしを行えるように、
   会社を変えていかなければならない!
   そう強い覚悟を持ったことを思い出します。
   今思うと「働き方改革」に意識が向き始めきっかけが
   このタイミングだったのかもしれませんね。
堀田:そのような背景があったんですね。
   では、今回チャレンジ企業に
   なぜチャレンジされたのか?教えていただけませんか?
米田:はい、働き方改革をどのように取り組めばいいのか?
   所属する外部の勉強会等でも自分なりに学んでみたものの、
   具体的にどんなことに取り組めば良いのかが分かりませんでした。
   多くの経営者の皆さんもどのように取り組めば良いのか、
   分からない方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
   そこで、そのヒントを得るために
   チャレンジ企業のコンサルを受けることにしました。
堀田:チャレンジ企業に参加してみていかがでしたか?
米田:整理をしていくなかで
   3つのボトルネックがありました。
   まず1つ目が「個人の意識の問題」です。
   個々の意識を変えていくことにしていきました。
   はじめは「仕事が好きだから」と反発するスタッフもいました。
   そのときに伝えたことは、
   理念にもある通り、
   支援者である私たち自身も豊かな暮らし、
   彩りある人生を送らないと、
   幸せや豊かな暮らしを提供することができないと。
   理念に沿った<会社の価値観>をあわせていくことを大事にしました。
堀田:多くの企業では、
   その考えや想いがきちんと浸透することができていなく、
   残業代をなくすために「働き方改革」をやっていると
   誤った認識でモヤモヤを感じたまま
   不満を持って働く社員の方も多いようですが、
   理念に沿った考えを伝えられて
   意識を変えていくといったことはとても素晴らしいですよね。

米田:ありがとうございます。個人の意識を変えていった上で、
   次に2つ目として「事業部のマネジメントの問題」に着手しました。
   各事業部ではマネージャーの運営方法の問題を一つずつ改善しました。
   例えば、シフト制で勤務を決めているのですが、
   あらかじめ遅くなる仕事があるのであれば、
   遅い時間帯から勤務開始のスタッフを調整するなど、
   ちょっとしたことの運営方法から見直しを行っていきました。
堀田:個人の意識から、事業部のマネジメント、
   3つ目はどのようなことに取り組んだのですか?
米田:最後に「会社全体の仕組みを変えていく」という問題解決に
   取り組みました。3つ目の仕組みを変えていくというフェーズが、
   このチャレンジ期間中で、一番取り組んだことになるかと思います。
   当初、私は様々な事例を聞く中で、
   IT業界でもない介護の業界で、クラウドツールを利用した改善など
   できないだろうなと思っていました。
   それはITの会社だからできるのではないか?と思い込んでいたのです。
   そこで出会ったのがkintoneでした。
   社内でkintone委員会をつくり2名の推進役を抜擢し、
   社内で問題となっていることについて、
   アプリを使いチャレンジしてみることにしました。
   例えば、社内で共有する書類の共有ですが、
   これまでは社内の有線LANのある環境で出先の現場から会社に戻って、
   書類をエクセルで共有することをルールとしていました。
   無駄に時間がかかりますし、個々に負担がかかっていました。
   そこでkintoneのアプリを活用し、出先からでも書類を作成し、
   社内で共有を行える仕組みを構築しました。すると
   無駄な時間は削減でき現場での仕事へ集中できる環境が整いました。
   他には社内でのメーリングリストを活用しての情報共有や、
   紙ベースで拠点間をやり取りしていたコミュニケーションをすべて、
   クラウド上のkintoneに集約することに取り組んでいきました。
   試行錯誤しながらですが、社内の仕組みを変えていくことで、
   スタッフ全員の気持ちのゆとりが生まれて、
   これまで無駄であった時間も大きく削減できるようになりました。

   またクラウド上に情報があれば、
   もしもの災害時に紙ベースで管理したものを
   紛失するなどのリスクをなくすこともできます。
   会社の仕組みを変えていくということに対して、
   うまくツールを活用することができたのです。
堀田:今も委員会のメンバーが中心となって、
   会社の問題点をkintoneで解決ができないか?と
   取り組みを続けられているとお聞きしています。
   うまく3つの課題をクリアしいくことができましたね!
米田:私は働き方改革において、
   この3つの順番が大切に思います。
   まずは個人の意識改革、
   そして事業部のマネジメントの見直し、
   そして最後に会社の仕組みを変えていくこと。
   社風が整ったうえで制度を変えていかなければ、
   制度はうまく浸透することができません。
堀田:これからどのようなことに取り組んでいかれますか?
米田:引き続きクラウドツールを活用した仕組みづくりを継続します。
   また、より働きやすい環境の整備に向けて、
   3年以内に経営理念を連動させた就業規則の改定に取り組みます。
   同じ業界のなかでも働きやすい環境を差別化のポイントとして、
   人材採用においてもプラスとなる発信ができればいいですね。
堀田:はじめにお聴かせいただいた使命とミッション。
   そして経営理念。米田さんが大事にされている考え方が、
   働き方改革に繋がっていることに強く感銘を受けました。
   これからの家族支援フォーラム様のチャレンジに、
   私たちも応援させていただきます。ありがとうございました。

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会社情報

  
代表取締役
米田 順哉
設立年月日
2003年
営業内容
知的障がいを持つ方の生活介護事業、 就労継続支援事業、障がい児のための放課後デイサービス

NPO法人家族支援フォーラム